旬どき・うまいもの自慢会・福島・第4回《夏の集い》開催報告
夏至にはちょっと早いですが、大七酒造では5月26日に「旬どき・うまいもの自慢会・福島・第4回《夏の集い》・田植え」を開催しました。第1回《秋の集い》に引き続き、東京からギリークラブの皆様をお招きして、自社栽培圃場『無天田』に今年も酒米「五百万石」を手植えしました。
前の日は冷たい雨模様。週間天気予報でも、この日は確実に雨になりそうな気配だったので、小雨決行の覚悟でカッパを用意したり、寒さ対策を考えたり、お天気については完全にあきらめムード。それなのに、何故か前日になって天気予報が大きく変わり、大きな晴れマークが!気温も夏日の予想。半信半疑で当日の朝を迎えてみれば、ほんとに嘘のような晴れ空。そういえば大七の田植えで雨が降ったことってないなぁ。降ってもお昼休みだけとか、そんな感じ。いや、田植えに限らず大七の行事はいつも天気に恵まれてるかも。ちょっとミラクル。もともと福島って割と大雨の少ないところなんですけどね。
晴れたのはよかったんですが、朝からものすごい風!このあたりは安達太良山から吹き下ろす風の強い日が多いところ。それで、休憩時の日よけにとあぜ道に張ったテントが、あっというまに飛ばされてしまうというアクシデント発生!田植え作業開始前からこれでは先が思いやられるとヒヤヒヤしましたが、これまた不思議なことに、お客さまが田圃に到着された時には、あの強風はどこへやら、そよそよと爽やかな風が田の水面を吹き渡る、最高の田植え日和となりました。
バランスを崩し「沈」して、泥だらけになる方が毎年一人は必ずおられますが、今年もやはり犠牲者が出た模様です。でもそれも手植えの醍醐味ってことで。今回のお客さまのほとんどが大七の田植えは2度目3度目という方ばかりだったので、皆さんなかなかお上手で作業は予想以上にはかどりました。このスピードでは予定より早く完了して、午後の時間をもてあますのではと懸念されたほど。なので、昼食も余裕を持ってゆったりと楽しんでいただけました。
食事は例によって大七社員の手料理です。
お昼にお出ししたのは、前回のブログでもご紹介した笹まき(きなこ・砂糖醤油)、雑穀入り梅干しおにぎり、豚汁、フキの炒め煮、有機ほうれん草のおひたし、うどスティック(味噌をつけて)、季節の野菜の浅漬け、バナナ。
笹まきはお客さま全員が初めてで、とても喜んでいただけました。それからもうひとつびっくりメニューだったのはフキの炒め煮。このフキ、実は大七酒造の中庭、しかも大七のシンボルツリー、あの「花梨(かりん)」の木の下から調達してきた食材。軟らかくてアクの少ない美味しいフキなのです。
野菜はこのブログでもなんどもご紹介している「田圃の先生」、大内信一さんの有機野菜。うどは故郷・岩手からかけつけた佐藤杜氏の畑で採れたものです。
昼食後は残った作業を片づけて、午後2時には会社に戻り、お風呂で汗と泥を流した後は、安達太良山を望むバルコンで小昼飯です。小昼飯=こじはん。このあたりでは農作業の合間に食べるおやつのことをこう呼びます。伝統的小昼飯の代表選手、凍みもち(しみもち)を焼いて砂糖醤油をからめ、海苔を巻いてお出ししました。
福島には凍み豆腐、凍み大根など、冬の寒冷で乾燥した気候を利用した伝統的加工食品が数多くありますが、凍みもちもそんな郷土食です。よもぎや山ゴボウの葉などを混ぜてついた餅を、寒さの厳しい夜に軒下につるして凍らせ、乾燥させたものです。少し水に戻して焼くと、つきたてのような柔らかさに戻ります。独特のひなびた旨味が凝縮されていてほっとする味。
ひと息入れたら次は安達ヶ原の真弓山観世寺見学へ出発です。
ギリークラブのメンバーは文楽がお好きな方が多いので、その演目「奥州安達ヶ原」の舞台を訪ねようというわけです。観世寺へは大七酒造から車で5分くらいで到着。境内には鬼婆が住んだとされる岩屋や、鬼婆の墓「黒塚」などがあります。あるじの子どもの病気を治すため、胎児の生き肝を求めてしかたなく旅に出る乳母。安達ヶ原の岩屋で長い間、身重の旅人を待ち伏せ、やっとの思いで生き肝を手に入れるが、殺した女は京に残した我が子であったと知り、発狂して鬼婆になってしまう・・・。何ともやるせないお話ですが、安達ヶ原の鬼婆伝説についてわざわざ事前に勉強してきたという方もいらっしゃるなど、皆さん熱心にご覧になってました。
再び大七に戻って酒蔵見学を。途中、お昼に食べたフキの繁茂を中庭で確認などしつつ、今は造りも終わって、静かに原酒が眠る蔵の中を回りました。そして、最後にたどり着いたのが宝暦ホール。今夜の懇親会場です。
さて今回のメニューです。
ツヴィーベルペーストとドイツパン
春野菜のサラダ酒粕ドレッシング
季節の天ぷら(うどの芽・地筍・アスパラガス・桑の葉)
葉玉ねぎとタコの酢味噌合え
わらびの炒め煮
卵と豚の角煮(夢味ポーク)
タケノコの煮物
太巻き・いなりずし
あさり汁
浅漬け
福島いちご
お酒は純米吟醸・真桜、純米生もと生原酒、大七生もと自然酒、大七生もと梅酒をご用意しました。どのお酒もおおらかな包容力があってチャーミングで、爽やかな5月の風の中で一日汗を流した後の宴にぴったり。
ツヴィーベルペーストというのは豚レバーのパテなのですが、福島県泉崎村にある手づくりハムと豚肉の専門店『ノーベル』のものです。こちらのお店は自家農場で育てた豚肉で、丁寧に本場ドイツ仕込みのハムやソーセージをつくっておられます。ちなみに角煮の豚バラ肉もこちらの農場の「夢味ポーク」を使いました。ツヴィーベルペーストは本宮町の『ドイツパン工房 ハルツ』のライ麦を使ったパン、プンパニッケルとサワライにのせて。
春野菜サラダの野菜はもちろん大内さんの有機野菜。玉ねぎ、ブロッコリー、さやえんどう、レタス、サラダ菜、ラディッシュ、どれも野菜本来の甘味が濃くて、そのまんまでもかなり美味しいのですが、今回は大七生もと純米大吟醸酒粕ドレッシングを添えました。葉物は酒粕入りフレンチドレッシング風のさっぱりタイプで和えて。温野菜は酒粕入り醤油マヨネーズ風のまろやかタイプを添えて。材料を適当に混ぜて作ったドレッシングなので正確なレシピは出していませんが、なかなか好評でしたので、お好みに合わせてお試しあれ!
天ぷらはもう1週間早ければ、タラの芽やコシアブラがあったのですが、この日は入手できませんでした。本当に山菜はあっという間に終わってしまいます。でも佐藤杜氏が育てたうどの芽とグリーンアスパラで春の香り満喫です。地筍はアクがなくて柔らかいので、皮をむいてそのまま天ぷらに。桑の葉の天ぷらは珍しいでしょう。福島県中通りは養蚕が盛んだった地域なので、今でも桑の木がたくさんあります。柔らかい葉はクセのない甘みです。抹茶塩と木の芽塩を添えましたが、木の芽塩は手作り。庭の山椒の木の芽を摘んで、盆ざるに広げて乾かすこと数日。ミルで粉にして焼き塩と混ぜるだけですが、作りたては香りが格別です。
その他にも葉たまねぎやわらび、あさり、いちご等々、福島でとれる春の旬素材を取りそろえました。
私たちの拙い料理ですから、舌の肥えた都会のお客さまに満足していただこうというのは、かなり無理があります。だから、この無天田イベントは毎回とっても悩ましい。でも幸い福島は、ちょっと探せば身近なところに素晴らしい素材が豊富にあります。だから、あとはどれだけ「心」を込められるかかな、と。だって、お客さまの大切な1日を私たちの田圃のために頂戴するわけですから、時間泥棒をしないように心がけなくては。日々出荷する商品についても同じことを思っています。大七のお酒でうれしい気持ちになって、素敵な時間を過ごしていただけるように、それを最優先に考えています。
今回の田植えにご参加下さった皆様、心に残る一日を過ごしていただけましたでしょうか。少し心配しております。
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