大地の恵みに感謝!大内信一さんと有機農業(第3章)
少し間があいてしまいましたが、二本松有機農業研究会の大内信一さんについて、今回はその情熱的でユニークな取り組みと将来の夢がテーマです。
大内さんが我が子のように大切に育てた作物は主に福島県内や東京の消費者グループ、生協などに出荷されます。生産者と消費者がお互いに顔の見える関係にあって、一緒に日本の有機農業を育ててきたという意識でつながっているのです。
大内さん自身、そういう人間関係を何より大切になさっていて、消費者と一緒の田植えや収穫祭で盛んに交流の場を提供されています。そこで生産者の人柄に触れ、食物の生産の場を身近に感じることで、私たち消費者は自然の恵みに対する感謝を再認識します。
感謝の気持ちを持って旬の食物に向き合うと、舌も鼻も目も、五感が普段より活性化されて、美味しいものをより美味しく感じられるような気がしませんか。
食物が食卓に上るまでの過程に思いをはせながらいただくこと。
これ、料理の腕を上げずに、毎日の食事を美味しくする方法です。
また地元の小学校の給食にも取り入れられていて、子ども達は旬の時期に地元でとれた安全な野菜を食べています。素敵なことですよね。感性豊かな子どもの時期に本物の味を知ることで、その後の人生がずっと豊かなものになるに違いありません。
そんな中で2003年度には環境保全型農業推進コンクールで農水大臣賞も受賞されています。これは地元の岳温泉旅館協同組合、牛肥育場と連携して地域循環型農業を推進する取り組みが認められたものです。8年ほど前から岳温泉の旅館では有機業研究会の野菜を使い、そこで出た生ゴミは近くの牛肥育場で堆肥にします。その堆肥を研究会のメンバーの畑で使い、収穫された野菜はふたたび温泉旅館にというシステムです。
他にも、『二本松の食と農のフェスティバル』というイベントを毎年主催されています。
今年は先日開催されたばかりなのですが、東京農業大学教授の小泉武夫先生をお招きしての講演会に私も行ってきました。「これでよいのか日本の食と農」というテーマで、日本の農業や食を取り巻く問題をわかりやすく提示された上で、農業の大切さを説き、私たちがこれから進むべき道を明快に示唆されていました。小泉先生のユーモアあふれるお人柄に由来する巧みな話術と、正確なデータに基づく説得力で、どんどん話に引き込まれ、あっという間の、そして有意義な2時間でした。
先生のお話は大内さんのお話と重なります。小泉先生は食を通してこの国の将来が見えるとおっしゃられました。だから農業問題をおろそかにしてはいけないと。
大内さんは農家と消費者と政治ががっちりと組んで日本の農業を健全で真に豊かな姿にしていかなくてはならないとおっしゃっています。大内さんが農業という仕事を通して見ているものは、単なる食糧の供給にとどまらない、たとえば食文化とか、人のいのちとか、地球環境とか、もっとずっと大きなものなのですね。
次世代の農業者の育成ということで、研修生の受け入れも積極的になさっています。
全国から老若男女いろんな人が来るそうですが、農村を守るために彼らをどう育てサポートするか、これからの課題として真剣に取り組まれているんだそうです。
私も大内さんを通じて彼らと話をする機会がありますが、みんな静かな中に情熱を秘めている素敵な人たちです。
次世代の担い手は新規就農者ばかりではありません。息子さんがもう立派に父の片腕となっていて、私たち大七の米作りもかなり助けてもらっています。息子さんの話になると「消費者とのつながりも地道に築けているようだし、いざとなればやっていけると思う」と厳しくもやさしい父親の顔をされました。
将来について、大内さんの頭の中にはまだまだたくさんのビジョンが詰まっているようです。
まず力を入れていきたいのが、農産加工の分野。
現在は自家製の味噌のほかに、加工業者の協力を得て食用油、うどん、小麦粉、せんべい、納豆、豆腐、を生産販売されています。この連携をさらに強めて主に大豆加工品に力を入れていきたいとのこと。大豆の消費を拡大すれば遊休農地の有効利用につながり、さらには大豆や小麦の自給率アップにまで結びつく、というのがねらいです。
また、無農薬有機栽培で安定的に収穫するための研究もずっと継続されていて、現在は無農薬除草の効果を期待して大豆と稲の輪作に取り組まれています。
そしてずっと描きつづけて、いつかかなえたい夢の話。
それは燃料や肥料まですべて自給できるようになることなのですって!つまり菜種をたくさん栽培して、自分で使う農業機械は自分の畑で取れた菜種の油で動かす。菜種かすは肥料にして無駄なく使う。そういう動きは各地ですでに始まっているんだそうです。
なんて素敵な夢でしょう!
そうして世の中が無理なく無駄なくゆっくりと回るようになったら、本当に素晴らしいでしょうね。
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