新そばの季節!美味しいそばを求めてあだたら高原へ
今年は平年に比べて秋の深まりが遅いようですが、それでも先週、安達太良山が白い帽子をかぶり、今朝はスキー場のゲレンデがくっきりと山肌に浮かび上がっていました。家の近くの川原にやってくる白鳥の数も日ごとに増えてきて、朝靄の中を飛ぶ白く美しい群れに季節の移ろいを実感する今日この頃。蕎麦好きの人には、待ちに待った新そばの季節到来です。私も早速、美味しい新そばを求めて出かけてきました。
向かった先は大七酒造から車で約20分、安達太良山の中腹、岳温泉からもほど近い高原にある「そばの里・花季」です。
このあたり、雪はまだのようですが、紅葉は盛りを過ぎて晩秋の冷たい風に枯葉が舞い散っていました。二本松市内出身の織井さんご夫妻がこの地に「花季」を開店して9年になります。仕事の都合で長野県小諸に暮らした10年間にそばの魅力にとりつかれてしまったご主人。その間、各地のそばを食べ歩き、そば道場に通って腕を磨かれたのだとか。ふるさと福島に戻って、山の上のこの場所を選んだのは、すべてのお料理の基本となる水の良さ、空気の良さはもちろんのこと、この素晴らしい環境の中で、景色もごちそうにしてお客様をおもてなししたいという思いからなのだそうです。
店内や玄関先には、さりげなく山野草の盆栽が置かれ、窓の外の広々した高原の景色ととけあい、とても心地よい空間を作りだしています。 野趣溢れるお庭とともに奥様が育てておられるこの植物たち。数日前に木枯らしが吹いて一斉に葉が落ちてしまったけれど、来年また生き生きとした緑の葉を生い茂らせるために、今すこし寒風にさらしてやるのも大切なことなのですって。その言葉から溢れてくる
奥様の優しさやこまやかな心配りがお店の空気にさりげなくとけ込んでいるようで素敵です。 店内の一角には陶器や版画などを並べたギャラリーが設けてありました。奥様がご自分の好きなものを集めて置いていらっしゃるそうですが、趣味の良さが感じられ、店内の雰囲気を盛り上げています。
安達太良の伏流水を自由に飲めるようにピッチャーが置いてありました。そばにもつゆにも大きく影響する水です。敷地内の井戸に豊富に湧く水はすっきりと清冽で、きめの細かい優しい感じの味でした。こちらのおそばはつなぎに2割の中力粉を使う、いわゆる二八そばですが、そば粉はご主人が全国各地のものを試したあげくに、現在は信州産のものと一部北海道産のものを使っています。福島のそば粉を試したこともあったそうですが、満足できなかったとのこと。そばは米の作れないようなやせた土地に向く作物で、そういうところで採れたそばのほうが断然よいのだそうです。米どころ福島の平場での減反転作としてのそばには限界があるということでしょうか。こだわって選んだそば粉は石臼引きにして二番粉を使います。粉によって、またその日の天候によって加水率が全然違うのだそうです。酒造りも蒸米の出来不出来など天候に微妙に左右される部分が多くあるのですが、そこを乗り越えるための苦労や努力があるからこそ、うまくいったときの喜びが何倍にも大きいものです。ご主人も全く同じことを言っておられました。お話をうかがっていて共感する部分がたくさんあったのは、美味しいものを作りたいという志を共有しているからに違いありません。
さてさて、まずはおすすめの「揚げそばがき」が出てきました!揚げたての熱々です。濃いめのつゆにわさびと大根おろしでいただきます。外側はからりと揚がってさっくさく、中はもっちりむちむちでふわふわのそば粉のおだんご(?)です。いえ、おだんごと一言で片づけるのは揚げそばがきに失礼というものですが、他に例えようのない初めての食感なんですもの。確かにむちっとした粘りがあるのに、ふっくらと口の中に広がって、そしてとろけてすうっと消えていく。後に残るのは甘く、優しい香りの余韻。ちょっとお行儀悪いけれど、思わず切り口をくんくんと嗅いでしまいました。これぞ新そばの香りなのでしょうね。ふわぁっと香ばしい、幸せな香り!揚げ油にもきっとこだわってらっしゃるんでしょう。しつこくなく、風味が良くてあっというまに完食でした。一緒にお水もいただきましたが、これが最高に合うんです。お互いの甘みを引き立てて、口の中をさっぱりとさせてくれる。そばもつゆもこの水から作られているのですから当然といえば当然です。
続いて「花かけそば」。冷たいおそばの上に天ぷら、山菜、みつば、大根おろし、削り節、かまぼこ、海苔が彩りよく盛られたぶっかけそばです。つゆをかけていただきます。新そばはほのかに緑色がかっていて、そば湯も緑色なのだと教えていただきましたが、本当にその通りの爽やかな色。ひとくち口に含んだとたん、そばの柔らかな香りがいっぱいに広がりました。なめらかな舌触りとのどごし、小気味の良い歯切れ、そしてきめの細かい甘さ!おそば自体、非常に美味しいのですが、なるほどなぁと感心したのは、具の分量やつゆの味のバランスが絶妙なこと。天ぷらはサクサクの歯触りで十分な存在感。三つ葉や大根おろしも香りや辛みで自己主張をしています。でもそれらすべてが主役のそばの味と香りを引き立てて、決して邪魔していないのです。つゆもまろやかで良い風味。聞けば、利尻昆布や本枯節を基調とした出汁に鯖節や宗田節を加え、温かいそば用と冷たいそば用と目的に応じて作り分けているのだとか。「揚げそばがき」を平らげた後なのに、これもまた残さず私のお腹に収まりました。
ところで江戸時代にはそば屋で一杯が江戸っ子の休日の贅沢だったとか。この日は昼間、しかも車でお邪魔したので、お酒を一緒にというわけにはいかなかったのですが、大七からくち生もとの燗酒など、粋な感じでおそばに合いそうです。
現在、ご主人は息子さんにそば打ちを伝授しながら一緒に仕事をしているそうです。息子さんの丁寧な仕事ぶりについて、目を細めてお話しされるご主人に、思わず「素敵な生き方ですね」と声を掛けたその時の穏やかな笑顔がとても印象的でした。自分のやりたいことをまっすぐに見つめ、夢を実現させていく人の懐の深さに触れたような気がしました。美味しいおそばをいただくことが出来たしあわせはもちろんですが、織井さんご夫妻との素敵な出会いに感謝です。帰り道、車で山道を下りる時にも、鼻腔にはまだほんわりと新そばの甘い香りが残っていました。
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25日は酒造りの初期段階で麹(こうじ)菌を米に均一に付ける「床もみ」という作業が行われていた。蔵人たちは蒸した米をつぶさないよう丁寧にかき回していた。麹づくりを経て、タンクに仕込み、20日前後、発酵させると新酒が出来上がる。タンクが備えられた蔵の中は甘酸っぱい酒の香りがしていた。28日には初しぼりが行われ、12月初旬に新酒として発売される。... [続きを読む]
受信: 2006年11月26日 (日) 20時19分


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